ガスプロム〜世界最大の天然ガス企業
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ガスプロム社は、天然ガス生産量世界最大を誇る、ロシアを代表する超巨大企業です。1989年設立で、前身はソビエト連邦ガス工業省。その天然ガスの生産量は、全世界の4分の1を占めるほどです。
ロシア最大規模の財閥企業ですが、株式の過半数をロシア政府が握っており、準国営企業なのです。ロシアは「国内のエネルギー産業は国が統制する」と明言しており、ガスプロムはその典型といえます。またガスプロムの会長は、2008年よりロシアの新大統領となったメドベージェフ氏が務めていることからも、半国営企業であることが伺えます。
またガスプロムは、2004年に石油開発大手の「ロスネフチ」を吸収合併し、ガス以外のエネルギー産業にも力を入れるようになっています。近年は国内だけに留まらず、ヨーロッパ各国のエネルギー関連会社を買収合併して、市場の独占化を目論んでいるようです。2007年度決算では、天然ガスなど資源価格高騰の恩恵を受け、純利益が約2兆7千億円になりました。これは純利益で世界でも2〜3位に相当し、世界的な超巨大企業に成長しています。
ガスプロムは残念ながら、米国のADRを利用していないので、他のBRICs企業のように日本から直接購入する事は出来ませんでした。しかし2010年よりSBI証券 でロシア株の取り扱いが始まり、個人投資家もガスプロム株を売買できるようになりました。そして2012年、電話取引のみだったのがネット取引も可能となったので、より簡単にガスプロム株を売買できます。
| 正式企業名 |
ガスプロム (Gazprom) |
| 業種 |
天然ガスの生産・供給 (世界最大) |
| 設立年度 |
1989年 |
| 会長 |
ドミトリー・メドベージェフ(ロシア大統領) |
| 従業員数 |
約30万人 |
| 株式上場市場 |
ロシア国内、ロンドン(GDR) |
| ティッカー(証券コード) |
ロシア市場【GAZP】、ロンドンGDR【OGZD】 |
| 業績 |
| 決算 |
売上高 |
純利益 |
| 2004年12月 |
9767 |
2056 |
| 2005年12月 |
13835 |
3111 |
| 2006年12月 |
21521 |
6133 |
| 2007年12月 |
22027 |
5950 |
| 2008年12月 |
35189 |
7429 |
単位は(億ルーブル)、出典:アルジゲート証券 |
天然ガスの価格高騰以外にもう一つ、同社には高成長の理由があります。ガスプロム社はロシア国内では半ば独占企業と化しているため、競争が起きないので価格をほぼ自由に設定できることにあります。国内でのガス供給用パイプラインをほぼ独占している様は、まだまだ社会主義国家を抜けきれていないロシアの現状を端的に表しています。
また、ヨーロッパ諸国へのガス輸出でも強気な価格設定を取り続けており、そのことが度々国際問題を引き起こしてています。特に2005年度には、ヨーロッパ諸国へのパイプライン経由地であるウクライナとの間に紛争が起こり、ヨーロッパ諸国でガス不足を誘発するという大問題に発展しました。
(※ウクライナは元ソビエト連邦で、ロシアとの関係は元々良好ではなかった)
ヨーロッパ諸国でも、最大のガス供給源はロシアであり、その大元であるガスプロムが独占的に価格を決めている上に、同社が各国の中小ガス会社をどんどん吸収合併して市場の独占化を図る現状に、警戒感を強めています。そのため欧州各国は、最近ではガス以外へのエネルギー転換を図る動きが盛んになってきています。ガスプロムがロスネフチを買収して石油事業にも乗り出した背景には、ヨーロッパ向けのガス輸出が売上高の7割を占めており、その先行きに上記のような不安要素を抱えていることが、大きな理由だと思われます。
サハリン2問題とガスプロムの関連性
ちなみに、2006年に日本を騒がせた「サハリン2プロジェクト」の開発中止問題にも、このガスプロム社が大きく関わっています(サハリン2とは)。ロシア政府が出した中止命令の名目は「パイプライン建設に伴う環境破壊」ということですが、その実は「ガスプロムもサハリン2プロジェクトの経営に加えろ」という意図なようです。
当初からサハリン2に出資していたシェル、三井物産、三菱商事の3社は猛反対して調整は難航しましたが、結局2006年12月に、ガスプロムが74億5000万ドルで開発会社=サハリンエナジー社の50%超の株を買収することが決定しました。サハリン2では、日本のガス需要の10%超を賄える見込みでした。
サハリン2の総事業費は200億ドルに達するといわれており、ガスプロムが株を買い取った値段は相当割安だと言えます。とはいえ、他の3社はロシアの領土内で事業をしている訳ですから、「事業の凍結」という究極の圧力が掛かってくる為に、このような治外法権を受け入れざるを得なかったようです。
このような強引な後出し手法は、資本主義社会では許されざる話ですが、ロシアという国がまだまだ社会主義・治外法権が残っていて、自由競争社会からは程遠い国であることを物語っています。しかし、単純に投資の対象としてだけを考えるなら、ガスプロムに代表されるように、政治力を背景に市場(利益)を独占できる訳ですから、有望な投資先だといえます。
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